アメリカとイスラエル、イランを攻撃と発表 米軍駐留の近隣国に報復攻撃か

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アメリカとイスラエルは28日、イランへの攻撃を実施したと発表した。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、「大規模な戦闘作戦」が進行中だと自らのソーシャルメディアで説明。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も、「存亡の危機を排除する作戦に着手した」と述べた。イスラエル軍は、イランから報復のミサイルが発射されたとしている。米軍が駐留する中東各国も、イランから報復攻撃があったとしている。
イランのファルス通信は、テヘラン、イスファハン、コム、カラジ、ケルマーンシャーの各都市で爆発音が聞こえたと報じた。
BBCは、テヘランのジョムホリ広場とハッサン・アバド広場の上空に煙が立ち上っている画像を確認している。
テヘランにあるイラン最高指導者事務所と大統領府も、攻撃の標的になったと報じられている。
イラン国営通信IRNAによると、南部ホルモズガーン州ミナブ郡の女子小学校で、イスラエルの攻撃によって40人が死亡、48人が負傷した。モハンマド・ラドメフル知事は、死者数が増えていると話した。
BBCはこの情報を独自に確認できていない。
インターネット監視団体「ネットブロックス」によると、イランではほぼ完全にインターネットが遮断されている。遮断前にはサイバー攻撃が確認された。
トランプ氏は28日、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に8分間のビデオを投稿。その中で、イラン攻撃にアメリカが関わっていると認め、「私たちは相手側のミサイルを破壊し、ミサイル産業を壊滅させる。(中略)完全に消滅させる」と述べた。
トランプ氏はさらに、「私たちは繰り返し合意を目指した。努力した」と主張し、イランについて、「核計画の再構築を試み、ヨーロッパの良き友人や同盟国、駐留米軍を脅かし、近いうちにアメリカ本土に到達し得る長距離ミサイルの開発を継続しようとした」と批判した。
そのうえで、「この極めて邪悪で過激な独裁政権がアメリカを脅かすのを防ぐ」ため、「大規模な」作戦を実施していると述べた。

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トランプ氏はまた、「勇敢なアメリカ人の英雄の命が失われる可能性がある。私たちにも犠牲者が出るかもしれない」と発言。
イラン国民に向けては、「イランの偉大で誇り高い人々に」と前置きし、「あなた方の自由の時はそこまで訪れている。屋内に避難していなさい。家を出てはいけない。外は非常に危険だ。爆弾があちこちに落ちるだろう。私たちがやり終えた時、あなた方は自分たちの政府を奪い取りなさい。あなた方の手に入る状態になっている。このような機会はおそらく、今後何世代にもわたって、二度と訪れない」と告げた。
さらに、「もう長年にわたり、あなた方はアメリカに助けを求めてきたが、それを得ることはなかった。どの大統領も、私が今夜行うことをするだけの覚悟を持たなかった。あなた方の前には今、自分たちが望むものを与えてくれる大統領がいる。なので、あなた方がどう反応するか、見てみよう。アメリカは圧倒的な力と破壊的な武力で、あなた方を支援している。今こそ、自らの運命をつかみ取り、手の届くところにある豊かで栄光ある未来を解き放つ時だ。今こそ行動の瞬間だ。この瞬間を逃してはならない」と呼びかけた。
イラン治安部隊のメンバーに対しても、武器を放棄すれば「免責」するが、しなけれれば「確実に死を迎える」と伝えた。

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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も28日に声明を発表。「イスラエルとアメリカは、イランのテロリスト政権がもたらす存亡の危機を排除するため、作戦に着手した」とした。
また、トランプ氏を「私たちの偉大な友人」と呼び、「歴史的なリーダーシップ」に感謝するとした。
ネタニヤフ首相はさらに、イランの宗教指導者による政権は47年間、「イスラエルに死を」、「アメリカに死を」と叫び続けてきたと主張。「この政権は我々の血を流し、多くのアメリカ人を殺害し、自国民を虐殺してきた。この殺人的なテロ政権が核兵器を手にし、人類全体を脅かすことを許してはならない。私たちの共同での行動こそが、勇気あるイラン国民が自らの運命を自らの手で切り開くための条件をつくり出す」とした。
イスラエル軍は同日、空軍がイラン西部で「いくつかの軍事目標に対する大規模な攻撃」を実施中だと発表した。
また、「先ほど、イランからイスラエルに向けて発射されたミサイルが確認され、国内の複数の地域で警報が鳴らされた」と説明。「現在、イスラエル空軍は脅威を取り除くため、必要に応じて脅威を阻止し攻撃する作戦を実施している」とした。

イランのアッバス・アラグチ外相は、攻撃を受けて声明を発表。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、バーレーン、イラクなどの外相と電話で協議し、イランは領土保全のため、「正当な自衛権に基づくあらゆる防衛・軍事能力」を行使すると伝えたとした。
アラグチ氏はまた、それらの国々に対し、アメリカとイスラエルによる攻撃という「自国の施設や領土の悪用」を「防ぐ責任がある」ことを「再認識させた」とした。
ソーシャルメディア「X」への投稿では、アラグチ氏は今回のアメリカとイスラエルの攻撃を「完全に一方的、違法、非合法」だと非難した。
さらに、トランプ氏について、「アメリカ・ファーストをイスラエル・ファーストに」変質させたとし、「アメリカ・ラストになったことになる」とした。
そのうえで、イランの強大な軍が「この日のために準備しており、侵略者らに思い知らせる」とした。
イランの攻撃受けたと近隣各国
アラブ首長国連邦(UAE)国防省は声明で、同国が「イランの弾道ミサイルによるあからさまな攻撃」を受けたと発表した。首都アブダビの南部にあるアル・ダフラ空軍基地は、米空軍も使用している。
同省は、「UAEの防空システムはミサイルに非常に効果的に対処し、いくつかのミサイルの迎撃に成功した」と説明。アブダビの住宅地に破片が落下し、アジアの国籍の民間人1人が死亡したとした。
バーレーン国営通信BNAは、同国にある米海軍第5艦隊のサービスセンターが「ミサイル攻撃の対象となった」と、バーレーン国家通信センターの発表を引用するかたちで伝えた。攻撃がどの国によるものかは説明していない。
バーレーンでは爆発が確認されている。同国の内務省は、緊急サイレンが鳴らされたとソーシャルメディア「X」で警報を発令。住民に対し、安全な場所への避難を呼びかけている。
カタールの首都ドーハでも爆発音と空襲警報が聞こえた。同国には、中東最大の米軍施設のアル・ウデイド空軍基地がある。
カタールの国営メディアは、同国の国防省が「この国の領土を標的としたいくつかの攻撃の撃退に成功した」と発表した。AFP通信はカタール当局者の話として、アメリカ製のパトリオットミサイルがイランのミサイルを迎撃したと伝えた。
今回のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃に、イギリスは加わっていないとみられる。
イギリス政府の報道官は、イギリスは「(事態が)エスカレートし、地域全体へと広がる紛争になることを望んでいない」とする声明を出した。
キア・スターマー英首相は28日、政府の緊急事態対策委員会「COBRA会議」に議長として出席する予定となっている。

イラン国民の反応
空爆があったイランでは、一部の地域で人々がパニック状態に陥り、別の地域で政権崩壊への期待感が膨らむなど、さまざまな反応がみられる。
いくつかの都市で大きな爆発音が聞こえたのは午前9時40分ごろだった。
ソーシャルメディアで拡散されている動画では、爆発現場の近くで人々がパニック状態で走り回っている。同時に悲鳴や泣き声が響いている。
その一方、政権崩壊は軍事介入によってのみ可能だと信じる人々の間では、ある種の安堵(あんど)感や、祝賀ムードすら漂っている。
現代史における最も血なまぐさい民間人弾圧の一つとされる、最近の反政府抗議活動に対する治安部隊の弾圧を経験した多くのイラン人は、たとえ軍事介入や高官らの死を伴うとしても、ともかく政権が変わることを歓迎すると話している。
反面、空爆だけで政権は崩壊しないのではないかと懸念する人々もいる。そうした人たちは、現政権がこの攻撃を生き延び、そののち国民に対してさらに残虐になるのではないかと心配している。
アメリカとイランの緊張関係
アメリカとイランは26日、スイス・ジュネーヴで、イランの核計画をめぐる間接協議に臨んでいた。仲介するオマーンの外相は、「大きな進展」があったとしていた。
しかし、トランプ氏は27日、イランを攻撃するかの「最終決定」はしていないと述べつつ、核協議におけるイランの交渉姿勢には「満足していない」としていた。
アメリカとイスラエルは数十年にわたり、イランが秘密裏に核兵器の開発を試みていると非難してきた。これに対しイランは、核兵器の保有を目指している事実はないとし、自国の核計画は平和目的だと主張している。ただ、イランは核兵器を保有していない国としては唯一、兵器級に近い濃縮度までウラン濃縮を行っている。

トランプ氏がイラン空爆の可能性を最初に警告したのは、イランで先月、治安部隊が反政府デモを残忍に弾圧し、数千人を殺害したことがきっかけだった。しかしその後、トランプ氏の関心はイランの核計画へ移っている。
アメリカはここ数週間、兵士数千人と、トランプ氏が「艦隊」だとする部隊を中東に派遣してきた。これには、空母2隻などの軍艦、戦闘機、空中給油機が含まれる。
アメリカは昨年6月にも、イスラエルによるイラン空爆作戦に加わる形で、イラン国内の核関連施設3カ所を攻撃している。
イランはこれまで、いかなる攻撃にも、中東やイスラエルにある米軍の資産を攻撃して対抗すると警告している。
イラン政府は、BBCなど外国の報道機関に対してビザ(査証)発給を拒否することが多い。このため、各国の報道機関がイラン国内の状況について情報を収集する能力は、大きく制限されている。
【解説】あえて戦争を選択、米とイスラエルは得難い好機をつかみに行ったか
ジェレミー・ボウエンBBC国際編集長
アメリカとイスラエルがイランに対して、新しい戦争に飛び込んだ。両国のこの動きは、予測不能な結果をもたらす、きわめて危険な瞬間を作り出した。イスラエルは、攻撃を正当化するために「先制」という言葉を使った。
「先制」と言うからには、差し迫った脅威があることがその前提となる。しかし、今回の攻撃は、差し迫った脅威に対する反応ではない。それは証拠が示している。その代わりに、これはあえてこうすることを選んだ上での戦争だ。
イスラエルとアメリカは、イランのイスラム体制が弱体化していると、そう計算したのだ。深刻な経済危機に直面し、年初に反政府抗議を残酷に弾圧したことの余波に揺れ、しかも昨年夏の戦争でひどく破壊された防衛力も回復していない。
つまり、イスラエルとアメリカは、今のこの好機は決して無駄にしてはならないと、そう結論したようだ。
そして、おぼつかなく揺らぐ国際法の体系が、またしても打撃を受けたのだ。
ドナルド・トランプ大統領とベンヤミン・ネタニヤフ首相はそれぞれの声明で、イランは自国に対する危険であると述べた。トランプ氏は、イランが世界にとって危険だと述べた。アメリカとイスラエルの両国が、イスラム体制と激しく敵対し続けたことは紛れもない。しかし、両国とイランとでは、実力の格差はあまりに巨大だ。となると、自衛という法的正当性が適用できるとは、考えにくい。
対するイランは、アメリカもイスラエルも信用していない。トランプ氏は最初の任期で、オバマ政権の外交政策の柱だったイラン核合意(JCPOA=包括的共同作業計画)から離脱した。
イランはこのところ、第二のJCPOAのような合意を、少なくとも時間稼ぎのために受け入れようとしていると、そういう兆しもあった。しかし、アメリカはどうやら、イランのミサイル開発計画や、イランがイスラエルとアメリカに敵対する周辺地域の同盟国を支援することも、厳しく制限するようを要求していたようだ。
それはイランにとって「降伏」に等しい、受け入れ難い要求だった。ミサイルと同盟国を放棄すれば、体制が最も恐れる政権転覆の危険がむしろ高まると、イラン指導部はそう認識していた可能性もある。
イランの首脳たちは今、この戦争をどう乗り切るか、どう生き残るか、そして、その結果をどう管理するか、さまざまに計算していることだろう。サウジアラビアを筆頭にした近隣諸国は、今日の出来事がもたらす巨大な不確実性と潜在的影響に動揺しているはずだ。
「問題を輸出する」能力が中東にどれだけあるかを思えば、再燃し激化した戦争は、すでに不安定で暴力的で危険なこの地域と、そして世界全体の不安定を、さらに深めることになる。









