人種を考慮した入学選考は違憲 米連邦最高裁、従来の判断覆す

Activist from Students For Fair Admissions celebrate the affirmative action opinion at the Supreme Court on 29 June 2023

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画像説明, 米連邦最高裁の前では、アファーマティブ・アクションに反対してきた団体などが今回の判断を歓迎した(29日)

米連邦最高裁判所は29日、大学の入学選考において人種を考慮に入れてはならないとの判断を示した。

アメリカで長年採用されてきた「アファーマティブ・アクション」(積極的差別是正措置)を覆す、大きな影響を招くことが予想される判断となる。

アファーマティブ・アクションは、米教育界で評価が割れている。1960年代に初めて導入され、多様性を高める措置として維持されてきた。

今回の判断は、ハーヴァード大学とノースカロライナ大学(UNC)の入学選考をめぐる2件の裁判で示された。最高裁(判事9人)はUNCに対しては6対3、ハーヴァード大学に対しては6対2の多数による判断で、それぞれのアファーマティブ・アクションを憲法違反だとした。

そして、法律問題の活動家エドワード・ブラム氏が設立した団体「公正な入学選考を求める学生たち」の主張を支持した。同団体は昨年10月に法廷で、人種を考慮するハーヴァード大学の入学選考は、人種、肌の色、国籍による差別を禁じた公民権法(1964年制定)第6条に違反していると訴えていた。

ジョン・ロバーツ最高裁長官は、「多くの大学があまりにも長い間、個人のアイデンティティーを測るのは、克服した課題でも、築き上げたスキルでも、学んだ教訓でもなく、肌の色だと間違って結論づけてきた」との見解を示した。

Protesters outside SUpreme Court

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画像説明, 米連邦最高裁の前ではアファーマティブ・アクションをめぐって賛否のデモが繰り広げられた
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大方が予想したとおりの判断が示されると、ジョー・バイデン大統領は「強く」不同意すると表明。

「この判断を結論にしてはならない」、「アメリカにはまだ差別が存在する」と述べた。

また、判事の構成が保守派6人、リベラル派3人となっている連邦最高裁について、「これは普通の裁判所ではない」と評した。

ミゲル・カルドナ教育長官は、「キャンパスの多様性確保のために大学が使ってきた非常に重要な措置を(裁判所が)奪った」とBBCにコメント。「しかし、私たちの国がそうであるように、大学も見事なまでに多様な学生たちで構成させようとする意志までは奪えなかった」とした。

長官はまた、合法的に多様性を維持する方法に関し、政府が大学に助言していくとした。

「悪質な固定観念」と最高裁長官

今回の判断では、多数意見の中で、UNCとハーヴァード大学の措置は「善意に基づくもの」とされた。

また、「人種が人生にどんな影響を与えるかに関する志願者の主張」を大学が考慮するのを禁じるものではないとされた。

一方でロバーツ長官は、「ハーヴァードの入学選考は、『黒人の学生は通常、白人が提供できない何かをもたらすことができる』との悪質な固定観念の上に成り立っている」とした。

米連邦最高裁2人目の黒人判事で、アファーマティブ・アクションの廃止を長年訴えてきた保守派のクラレンス・トーマス判事も、「明らかに違憲」な措置だとの見解を提示。

「大学が自称する正義は、人種による差別を許すものではない」とした。

Protesters gather in front of the US Supreme Court as affirmative action cases involving Harvard and University of North Carolina admissions are heard

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画像説明, 昨年10月の米連邦最高裁前のデモで、「多様性を守れ」と書いたポスターを手にする参加者
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黒人女性として初めて連邦最高裁判事になった、リベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事は、今回の判断を「私たち全員にとっての真の悲劇」とし、少数意見を展開。

優遇的な立場にある人は差別に鈍感だとし、「今日、多数派は非常手段に訴え、法的判断によって『誰も色による差別は受けない』と宣言した」とした。

リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事も少数意見の中で、今回の判断は「人種差別が残る社会において、色で差別しないという表面的なルールを憲法の原則として固定化させる」と述べた。

大学や学生らの受け止め

「公正な入学選考を求める学生たち」創設者のブラム氏は、裁判での勝利を喜び、「差別的な入学選考が、この国の公民権法を損なってきた」と話した。

「アジア系アメリカ人教育連合」ユーコン・ザオ会長も、今回の判断を歓迎した。

同連合は、アファーマティブ・アクションがアジア系アメリカ人のエリート校入学に悪影響を及ぼしてきたと主張してきた。ザオ氏は、「この判断により、アメリカン・ドリームの根幹である実力主義が維持される」とBBCに話した。

一方、ハーヴァード黒人学生協会のアンジー・ガボー会長(21)は、「非常に落胆している」とBBCの取材で述べた。

最終学年を迎えるガボー氏は、自らの入学では人種が「100%影響した」と考えているとし、懸念を示した。

「この国で人種の影響を受けている学生は、自分の人生に人種がどう影響しているかを示すために、願書にトラウマを書き込まなくてはならないと感じるようになる」

ハーヴァード大学のローレンス・バカウ学長は声明を発表。大学として「裁判所の判断に従う」とした一方で、「さまざまな背景、考え方、人生経験を持つ人々」を引き続き受け入れていくとした。

UNCのケヴィン・ガスキウィッツ学長は、大学が「望んでいた」判断ではないとしたが、内容を検討し、「法律に従うため必要な措置をとる」と述べた。

Supreme Court Justices

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画像説明, 連邦最高裁の判事たち。保守、リベラルのイデオロギーに沿った見解を示すことが多い
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来年の大統領選挙で共和党の最有力候補となっているドナルド・トランプ前大統領は、今回の判断について、「素晴らしい日」になったと称賛。「並外れた能力と、成功に必要な他のすべて」をもつアメリカ人が「ついに報われる」とソーシャルメディアで書いた。

連邦最高裁は大学のアファーマティブ・アクションを、2016年とその前の計2度、支持してきた。

人種に基づいた入学選考は、すでに9州で禁止されている(アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ジョージア、オクラホマ、ニューハンプシャー、ミシガン、ネブラスカ、ワシントンの各州)。

カリフォルニア州では、アファーマティブ・アクションの禁止から24年たった2020年の住民投票で、復活させる案を否決した。

現在の連邦最高裁は保守派が優勢だ。昨年は、女性の中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆し、多くのリベラル派を激怒させた。

しかし最近は、政治的左派が歓迎する判断も示している。ネイティブ・アメリカンの児童福祉に関するものや、アラバマ、ルイジアナ、ノースカロライナの各州の選挙法に関するものなどだ。