イラン女子生徒の毒ガス被害、新たに26校で発生 政府不信の声も

マリアム・アフシャング、フェラナク・アミディ、BBCワールドサービス

Ambulances parked in front of a school in Tehran

画像提供, 1500tasvir

画像説明, 毒ガス被害のあった学校に救急車が到着する中、生徒の親たちが詰めかけている

イランの学校で女子生徒らの毒ガス被害が多発するなか、新たに26の学校で1日、計数十人の女子生徒が被害を受け、病院で手当てを受けた。

毒ガス騒動は昨年11月に始まり、これまでに1000人以上の生徒が被害にあった。呼吸器の障害や吐き気、めまい、倦怠(けんたい)感などの症状が出ている。

地元メディアや活動家によると、最新の事案は少なくとも5都市の26校で発生。BBCペルシャ語は、首都テヘランや北西部アルダビル、西部ケルマンシャーなどで、学校に到着する救急車や、病院で手当てを受ける生徒を映した動画を本物だと確認した。

テヘラン西郊テフランサルで撮影された映像では、第13アバン学校の女子生徒とされる数人が、病院のベッドで酸素吸入を受けている。

テヘラン東郊での別の動画では、小学校の外の歩道に少女たちが座っている。校門に母親が走って来て「私の子供はどこ?」と叫ぶと、男性が「生徒たちが毒ガスの被害にあった」と答えている。

Two girls holding hands outside their school in Tehran after it was attacked
画像説明, 毒ガスの被害が発生したテヘランの学校で、学校外に避難する少女たち

多くのイラン国民が、女子校を閉鎖するための計画的な行為ではないかと疑っている。

しかしイラン政府は、計画的なものとみているか、明言していない。

ファルス通信は1日、この事件に絡んで3人が逮捕されたと報じた。一方、アフマド・ヴァヒディ内相は、この報道は「うそ」だと否定している。内相は一連の事件の「根本的原因」を突き止めるよう、大統領から命令されている。

ヴァヒディ内相はまた、外国に拠点を置く「雇い兵グループ」がこの状況を利用して心理戦を展開し、人々を不安に陥れていると非難した。

被害者のほとんどが女子

毒ガス被害は当初、テヘランの南にあるシーア派イスラム教の聖地ゴムに集中していた。

BBCペルシャ語の調べによると、2月26日までに被害を受けた生徒は少なくとも830人で、ほとんどが女子だった。一方、イラン議会のある議員は、2月28日までの被害者がゴムと西部ボルージェルドだけで1200人に上ると述べた。

被害者は、体調を崩す前に柑橘(かんきつ)類や腐った魚のようなにおいがしたと報告している。

ファルス通信によると、議会教育委員会のアリレザ・モナディ=セフィダン委員長は29日、調査の結果、毒ガスには窒素が含まれていることがわかったと述べた。

しかしヴァヒディ内相は記者会見で、特定の化学物質が検出されたという報道は間違っていると指摘した。

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政府への不信感も

28日に被害にあったテヘラン郊外パルディスの学校に娘を通わせている親は、「娘と友人2人は、爆発音のようなものを聞いた後、不快なにおいがしたと言っていた。焦げたプラスチックのようなにおいが充満したと」と述べた。

BBCは安全の観点から、この人物の身元を明かしていない。

「生徒は教室を出て校庭に出るよう指示された。生徒の多くが校庭で倒れた。娘のクラスには、ぜんそくや心臓疾患がある生徒もいた」

「救急車と警察が来た。救急隊員は子供たちに牛乳を飲ませていた」

1日にインターネット上に投稿された動画では、ケルマンシャーの小学校の女子生徒たちが爆発音を聞いたと言っていたと、女性が話している。その後、生徒が体調を崩して救急車を呼んだと、校長が発表したという。

動画ではまた、この女性に対して少女が、自分たちは抗議デモに参加したから「選ばれた」のかと尋ねている。

生徒や親からは、女子生徒たちは反政府デモに参加するなどしたために狙われているのではないかとの推測も出ている。

イランでは昨年9月に髪の毛を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとして、クルド系女性のマサ・アミニさん(22)が道徳警察に逮捕され、その後に死亡した。この事件をきっかけに、全国で反政府デモが広がっている

当局はこの抗議行動を「暴動」とみなし、殺傷兵器をもって対応している。人権団体は、数十人の未成年を含む数百人のデモ参加者が殺されたと報告している。

An ambulance arriving at a school in Ardabil, north-western Iran
画像説明, イラン北西部アルダビルで、学校に到着する救急車

毒ガス被害と当局の対応への怒りが、イランで新たな不安を生み出している。

1日にテフランサルで撮影された映像には、第13アバン学校の外で少女たちが、反政府デモのスローガン「女性、命、自由」や、「子供を殺す政府に死を」と叫んでいる様子が映っている。

パルディスの学校に娘を通わせている親は、「怒りと心配を抱えながら学校に来た。保護者たちは(イランの最高指導者)アリ・ハメネイ師に抗議するスローガンを叫び始めた」と語った。

「当局がこの襲撃を捜査しているなんて誰も信じていない。政府には何の希望も抱いていない。でも世界が私たちの声を聴いて、子供を殺す政府を支援するのをやめるのを願っている」

当局の発表では、この学校からは35人が病院に運ばれたとされる。しかし、実際にはもっと多かったという。

「他の親や校長との会話から、全生徒の半数が病院に運ばれた。つまり、少なくとも200人だ」

そのうちの1人は危篤状態にあるとこの親は言い、「中には、子供を病院に連れて行くのを拒否した保護者もいる。当局を信じていないし、怖いからだ」と語った。